社会に開かれた教育フォーラム

2017年07月04日

 2017年6月25日(日)永田町にて、「社会に開かれた教育フォーラム」を開催。文部科学省初等中等教育局財務課長 伊藤学司氏、岩手県大槌町教育委員会教育長 伊藤正治氏、岩手県大槌町教育専門官/NPOカタリバ菅野祐太氏、島根県海士町隠岐國学習センター長 豊田庄吾氏、島根県立隠岐島前高等学校社会科教諭 中村怜詞氏をゲストに迎え、"社会に開かれた教育"に関する考え方・実践事例についてプレゼンテーションとパネルトークから学び、100名以上の多様な参加者同士も熟議を通してこれからの教育について考えた。

社会に開かれた教育とは?

文部科学省の方針と現場の実践事例から学ぶ        

 「AIの発展などにより、人間の持つ役割や学んでいることが時代遅れになる危機感から、知識を覚え正確にこなすのでなく、未来を考え社会の変化に対応できる力を身につける必要がある。これまでは社会の変化に受け身だった。これから必要なものは、社会を変えていくための教育課程。攻めの教育課程だと考えている。」と"社会に開かれた教育課程"のコンセプトの部分から全体概念について、文部科学省初等中等教育局財務課長 伊藤学司氏が解説。

 「学習指導要領自体は分量も少なくあくまで基準でありさらに基礎として教科書がある。基準と基礎を踏まえてどういう授業をつくるのか・地域資源を使いながら学んだことと社会をどう繋げるのか、アレンジによって学びの深みを出す、その深みの出し方を各校で取り組んでもらえたら。」と話した。

 続いてこの"社会に開かれた教育課程"のコンセプトをすでに実践している先進事例として、島根県立隠岐島前高等学校社会科教諭 中村怜詞氏と、岩手県大槌町教育委員会教育長 伊藤正治氏より、実際の取り組みを発表。社会に開かれた教育課程とはどんな理念なのか?またそれを実際に実現している現場はどんなことに取り組んでいるのか?について、参加者全員が理解を深めた。

社会に開かれた教育の実践現場から学ぶ

パネルトーク

 一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム共同代表今村久美もファシリテーションに加わり、ゲストによるパネルトークを実施。実践現場の苦悩や本音とともに、それを乗り越えるポイントや意味について具体的な話が飛び交った。


 まず、NPOカタリバの職員として震災後に岩手県大槌町で教育支援活動に取り組み、現在は大槌町教育委員会の中に在籍している菅野祐太氏から「行政は最初は全然開いていない、少しずつ開きはじめたところ。豊田さんに聞きたいのは、海士町モデルをどうスケールしていくのか?海士町だからできた問題があると思う。」という問いかけから始まった。

島根県海士町隠岐國学習センター長 豊田庄吾氏は、「学校も地域もどちらも最初から応援的というはわけではなかった。本当にやったことは、対話を地道に重ねたこと。町長たちと一緒に地区をまわり、理解をしてもらう行脚をしていった。大事なコンセプトは三方良し。色んなステークホルダーが納得する打ち手を、時間をかけてつくっていった。」と、決して最初から条件が整っていたわけではなかったことを明かした。さらに中村氏は、「人事異動で島前高校に配属になって、正直地域に愛着はなかった。ただ、赴任した時に、この学校は地域に貢献する学校だと言われた。確かに育みたい力のような観点は前任校にはなかった。あったのは、進学実績目標だけだった。ただ、実際にやると、地域の温度感はそこまでだったのを覚えている。」と続けた。


 一方大槌町ではどうだったのか。今村からの「抜本的な小中改革をしていった大槌町のふるさと科や一貫校の取り組みはどんな意思を反映したくて行われたのか」という問いに、伊藤教育長は「震災により、町としての機能が失われた。子どもたちのふるさとの原体験が、瓦礫だけではいけないという願いだった。ふるさとそのものに愛着を持てるように、教育を通じてふるさとを新しく創造していくことが大事だと考えた。そのために、テストで良い点を取る学びでなく、社会をつくりだしていく学びが必要。これまでは子どもたちを見くびっていた。子どもたちには創造力・協働する力が多くある。ただ、画一的な学びによりその機会を奪っていたのではという気もする。また学校だけでなく、他の団体(コラボスクール)と協働することも大事だと考えていた。」と答えた。


 さらに具体的な実践の話になると、管野氏の「今度の指導要領の改訂は、学校だけでなく地域も巻き込んでやる必要があり、とても難しいこと。学校や地域を巻き込んでいくにあたり、よそ者だけが盛り上がるのでなく、地域の人を巻き込み、温度感・ノリをどうつくればいいか?」という悩みに対し「シンプルに、子どもの成長・変わった瞬間を共有できた時に、動いた気がする。取り組みには懐疑的でも、生徒が変わった瞬間を目の当たりにすることで仲間感ができたのでは。地域の人も同じ。」と豊田氏が経験談を明かした。

 伊藤氏は、「小中は自治体の管轄なので地域の協力を得やすい。高校は違う。地域からも、高校からも遠い存在だった。しかし、高校生の方が小中学生よりも、地域に対してできることは大きい。地域に開かれた教育課程を充実させるために、高校生が地域にでることで良い影響がでるケースをつくっていくことも重要。」だと話した。


 一方で高校現場の温度感として、中村氏が「必要な学びだとわかっていても、何をすればいいのか分からず苦しい。大きな目的だけ提示されることにより、何をすればいいのかわからず準備に徹夜でのぞんだり...。ただ、実際にやってみると、4ついいことが起きた。1つは地域に踏み出す時に、コーディネーターがいて助かったし、地域の現場で第一線でやっている人の熱にふれ、自分も感化されたこと。2つ目は、本気の地域の人に出会うことで、生徒の変化も起きること。3つ目は、コーディネーターと毎週MTGをして、そこで目線を合わせ、どんな生徒を育てるのかを熟議していくことで、授業への不安がなくなった。これまではそんな経験なかった。みんなで目線をあわせたことだからこそ、みんなの期待に応えたい気持ちも湧く。最後に、教員としての成長実感を感じられた。何人の生徒を国公立に送り出したということではなく、"こんな生徒を育てているんだ"ということを、言える自分がいる。これまでは与えられたフレームの中で、成果をだすことが教員だと思っていた。でも、フレームをつくることから設計できることが教員の仕事だと思う。そんな空気感が当たり前になってきている。」と話した。


 最後に豊田氏が社会に開かれた教育の重要性について触れ、「今の教育の課題を解決していくのは、ひとつの組織ではない。いろんな人が協働して臨んでいくもの。プラットフォームもそうだし、ここにいる人たちつながることも大事だ。」と話しパネルトークを締めくくった。

"ここにいるみなさんと創っていきたい"

地域・教育魅力化プラットフォーム


地域・教育魅力化プラットフォーム共同代表の岩本悠が登壇。地域・教育魅力化プラットフォームが実現したい未来について、「ここにいる皆さんと一緒にプラットフォームをつくり、社会に開かれた教育を実現する仲間としてやっていきたい。」と伝えた。

参加者全員が対話を通じて関心を深めるワークショップ


 豊田氏をファシリテーターに迎えて、ワークショップを実施。グループごとに分かれて登壇者への質問をしたり、グループの中でテーマ別に分かれて議論を深めたり、それぞれがここまでのインプットや元々の関心やフィールドを踏まえて熟議を行った。多様な立場の参加者同士が、社会に開かれた教育について議論するこの場所から、全国に広がるうねりが起こっていく予感がするような熱い時間となり、「時間が足りなかった」という声も参加者から聞こえた。


最後に               

 最後に、グループごとに参加者の皆さんからの感想共有と、地域・教育魅力化プラットフォームの評議員を務めていただいている総務省大臣補佐官の太田直樹さんからも激励をいただき、地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事の水谷智之の挨拶でフォーラムは終了した。終了後も参加者同士の名刺交換や熱い議論が1時間ほど続く、熱気に溢れたフォーラムとなった。


参加者の声

                

■社会に開かれた教育の必要性が分かりました。実際に地域で働き、関係性を作っていくのは大変だし、時間もかかりますが、こういう場にきて、全国で活躍されている方々と話す機会があることでモチベーションを上げることもできました。

■文科省、隠岐島前高校、岩手県大槌町、地域・教育魅力化プラネットフォームなど多様な立場の方々との取り組みを実践することができました。学校と地域、また都道府県をこえたネットワークが必要だと思いました。熱い志を持った人々の熱量が日本の教育を変えていく、変えられるという思いを強くしました。

■卒業生やコーディネーターの方のお話を実際に聞けて、実状を感じられたのと教育・地域に関して熱意のある方と接し、自分に何ができるのか考えるきっかけになりました。どうやっていくかは話し合いながらきめていくということは、自分事として考える協力者・ネットワークの広がりを持たせるのではないかと思い、これからの活動が楽しみです。

■様々な立場の方々と話す対話する機会はあまりないので、とても有意義な時間を過ごすことができました。こんなプラットフォームがあったら、きっともっといろんな可能性がでるのかなと思います。

■各セクターの方の声を聞き、全体としては同じ方向性に向かっていて、今後どのような動きをしていかなくてはいけないのか理解できた。

■県立高校が地域に開かれた教育課程を創っていくのは市町村の小中学校と違って難しいと教えていましたが、皆さんの話を聞いてヒントが得られてとても勉強になりました。

■日本の教育、地域創りの新しいウネリに参加することができ、今後、自分のすべきこと、やっていきたいことを考えていくきっかけを得ることができました。プラットフォーム創りに何らかの形で協力できればなと思います。「プロジェクト型学習」を担当する一人として、全国にプロジェクト型学習を広げていく仕組みを作っていければなと思っています。

■パネラーの方々と近い距離で自分たちの関心を話し合えたことが良かった。まさに、この時間、空間がプラットフォームになっているのではないかと思うので今後もこのような場でネットワークを広げる機会をいただければ幸いです。

■現場の様子をご苦労も含めて具体的に伺えたので。4時間がとても短く感じました。もっともっと学校と地域やNPOなどの活動が協力して子供たちの未来を良いものにしていけたらいいなと思います。


※たくさんの方にご来場いただきまして大変ありがとうございました。